ヴィム・ヴェンダースの最新作「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」というドキュメンタリーを観てきました。観たあと、言葉として消化されるのに時間がかかるほどこんなに考えさせられたのは久しぶりのこと。
セバスチャン・サルガド自身が自らの作品をシンプルなインタビューで語りながら、時代背景などを解説してくれるという贅沢な内容。 彼は、1970年代から報道カメラマンとして 世界中で資源の開発、戦争、民族紛争で国を追われる人々を撮り続けます。そこで見た 人間の作り出した闇に絶望し、心を病み、故郷ブラジルへと帰ってきます。そこで自分が生まれ育った農場が荒れ果てた姿になっているのを知り、疲れた心を奮い立たせる。なんと、乾ききった大地に1本1本苗木を植えはじめ、数年がかりで緑の山を復活させるんです!
その森林再生プロジェクトを成功させるのと並行し、彼は 太古の姿をとどめる自然の姿を、原始のまま生きる少数民族の暮らしを再び撮りはじめます。 ひとりの力ではどうすることもできないと絶望した人間の闇。 苗が土に根付き、木が成長して林になる。故郷の山が再生するのと同じくらいの時間をかけて、彼の絶望が「癒された」記録のように感じました。 「癒し」っていうのは、自分以外のだれかから与えられるものではなく 何かを大切に想い、愛情をかけ、再生したときに得られるごほうびなのではないか、ということも。日頃から「癒し系」?とか「癒しグッズ」?なんていう お手軽な「癒し」という言葉に 感じていた違和感の謎が解けたような気がします。
会場の隅に貼られていたシワシワのポスター。原題は「LE SEL DE LA TERRE」(地の塩)。聖書の中にある言葉で、モノが腐るのを防ぐ正しい行いを説いた意味らしい。
流れてくるニュースを見ては 希望を失いがちになる毎日だけど、手間ひまをかけてごはんをつくる、家にある植木の手入れをする、なんてあたりまえのことを 心をこめてすること。自分のためにできること、ちゃんとしようっと!
「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」